WADACHI 社会保険労務士・行政書士・運行管理者試験対策研究室社会保険労務士・行政書士事務所

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特に腎臓内科・眼科に関する障害年金を中心に取り組んでいます。
相談は無料です。

障害年金

「障害年金」のはなし -
前編

1. はじめに・・・

「年金」と聞くと「高齢で働いていない人が受けるもの」と思っていませんか?「障害年金」は、その要件を満たせば現役世代で働いている人にも給付が行われます。人工透析患者の場合には、保険料の納付その他の要件を満たせば給付を受けられる可能性がありますので、働きながら透析を受けている人もあきらめないで検討してみることをお勧めします。
私は透析歴6年8か月の61歳です。定年後に社会保険労務士・行政書士事務所を開業し、現在は静岡共立クリニックで夜間透析を受けていますが、先生やスタッフのおかげで今も元気に働くことができています。
私が社会保険労務士を志すキッカケになったのが障害年金の申請でした。年金の仕組みも障害年金の申請方法もわからないまま、自力で請求してみましたがあえなく却下。そもそも初めは、現役で働いている者が年金などもらえるはずがないと思ってさえいました。日本では社会保険制度が充実していると思っていたのですが、いざ使ってみようとするとわからないことばかりで、苦労した記憶があります。そこで社会保険労務士の勉強を始め、同じような悩みを抱える方の役に立てればうれしい、と思って資格を取ることにした次第です。

2. 公的年金の種類と仕組み

厚生年金や国民年金に加入していると、一定の条件を満たせば年金の給付を受けることができます。「障害年金」もその一つで、老齢年金、遺族年金と並んで年金制度の代表的な給付の一つです。
厚生年金や国民年金は他の民間の年金制度に対して「公的年金」と呼ばれています。会社員や公務員など、おつとめの方は厚生年金に、自営業や主婦などは国民年金に加入するのが一般的です。厚生年金は、国民年金(基礎年金)の給付に上乗せする形で給付が行われますので「2階建て」制度などと呼ばれています。

3. 障害年金の種類と受給できる金額

障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。カンタンに言うと、おつとめの人はこの両方を、自営業や主婦の方は障害基礎年金だけを受給することになります。一般的な障害年金は、「初診日から1年6か月を経過した日」に障害等級に該当することが求められますが、腎臓病患者の場合、初診日から長い年月をかけて病状が進行するために、一般的な障害年金には該当しない場合がほとんどです。そこで、「事後重症による障害年金」という特別な要件が定められており、65歳の誕生日の前々日までに障害の状態にある人がこの要件に該当します。注意したいのは、「事後重症」での請求は「65歳の誕生日の前々日まで」にしなければならないことです。
障害等級には障害厚生年金では1級から3級が、障害基礎年金では1級と2級があります。この等級区分は身体障害者手帳の障害区分とは異なります。
私自身の経験では、透析前は身体障害者手帳3級、透析導入後は1級に変わりました。障害厚生年金と障害基礎年金では、透析患者はどちらも2級です。

つぎに障害年金で受給できる金額がどのように決まるのかみていきましょう。
前述のとおり、障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金とがあり、金額の計算の方法も異なります。
(1) 障害基礎年金の額は一律
障害基礎年金の場合には、人工透析を受けている2級該当の場合、年間で【780,900円×改定率】という計算式で求められます。改定率は物価の上昇率等で毎年更新され、2023年度は年間で795,000円とされました(2023年6月支給分から)。これに、子の加算228,700円(高校3年生までの子の生計を維持している場合)と「障害年金生活者支援給付金」が毎月5,140円加算されます。子の加算も支援給付金も毎年改定されますが、その改定方法はここでは省きます。そうすると、例えば高校生までの子がいる場合には、月々で見ると(795,000+228,700)÷12+5,140円≒90,448円、となります。(1円未満は2月の支給で調整されます)。なお、障害基礎年金には配偶者の加算はありません。
(2) 障害厚生年金の額は収入の額によって変動する
障害厚生年金の場合には、障害基礎年金のように一律ではなく、「報酬比例」という計算式で求めた額+障害基礎年金の両方が支給されます。報酬比例の計算式はやや複雑ですが、平成15(2003)年以降は、ボーナスも含めた【平均標準報酬額×0.55%×被保険者期間の月数】です。ただ、障害厚生年金の場合「被保険者期間の月数が300月に満たない場合は300月とする」例外があるため、被保険者期間が短い人でも極端に少額になることはありません。
平成15年4月以降に単純化しておよその額を計算すると…

(例)Aさんが、月々の報酬が30万円、ボーナスが年間4か月で20年勤めた場合
<平均標準報酬額>
(30万円×12+30万円×4)×20年=9600万円。
これを240か月(12か月×20年)で割った額=40万円が平均標準報酬額となります。
<年金額>
Aさんの被保険者期間は240か月ですが、300月として計算しますから40万円×0.55%×300月=660,000円となります。
※実際には、給与が20年間変わらない場合はほとんどなく、また過去の金額を現在価値に置き換える「再評価率」という仕組みによって金額は上下します。

つぎに、障害厚生年金の場合には、子の加算ではなく、配偶者の加算228,700円(生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合)があります。なお、障害厚生年金には子の加算はありません。
障害厚生年金には3級という区分があり、2級と同等の年金が支給される場合があります。障害厚生年金3級は人工透析導入前の検査結果などで判断されますので、透析前の人でも受給要件を満たす場合があります。

▼腎臓疾患における障害認定基準の大まかな目安

「障害年金」のはなし -
後編

前回は障害年金の仕組みと受給できる金額の算出方法について説明しました。
・障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があること
・障害基礎年金は定額(2023年度の場合は、795,000円に子の加算があること)
・障害厚生年金の場合は、平均標準報酬×約0.5%×月数で計算され、配偶者の加算があること
などがその内容です。今回は初めての申請方法や老齢年金との違い、障害年金と老齢年金の切り替え時の注意点などを見ていきましょう。

1. 障害年金の支給要件

障害年金の支給を受けるには大きく分けて以下の3項目の要件を満たす必要があります。
①支給対象者の要件
ア 障害基礎年金の場合
・初診日において被保険者であるか、または
・被保険者であった者で、60歳以上65歳未満の者
イ 障害厚生年金の場合
・初診日において被保険者である者
※例えば私の場合には、人工透析を始めた時期は厚生年金加入者でしたが、初診日には国民年金のみの加入者でした。したがって、「初診日に(厚生年金の)被保険者」ではなかったことになります。
②障害状態の要件
・65歳の誕生日の前日までに、1級か2級の障害等級に該当すること
(人工透析患者は2級に該当します)
③保険料納付要件
・初診日の前日において、前々月までの保険料の滞納がないこと
(特例で、初診日の前々月までの1年間に滞納がないこと)

2. 支給対象者の要件には注意が必要

腎臓疾患の障害年金は「初診日」が重要です。腎臓病は、一般に初診日から年月をかけて進行しますから、いざ請求しようとすると初診日がいつなのか確定しづらい場合があります。初診日がいつか分からないからと言ってあきらめず、専門家に相談されることをお勧めします。なお、っ初任日が20歳前(国民年金加入前)にある場合は、「20歳前の障害による基礎年金」という特別な制度がありますがここでは省略します。

3. 腎臓疾患における「障害状態」とは

腎臓疾患については腎臓疾患用に「認定基準」が定められており、認定基準の中に障害等級の判定について記載がされています。
①適用となる疾患の例
糖尿病性腎症、慢性腎炎(ネフローゼ含む)、腎硬化症、多発性嚢腎炎など
②認定基準
2級では、「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加え ることを必要とする程度のもの」
3級(障害厚生年金のみ)では、「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働 に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」 とされ、検査項目などを参考にして決められます。ただ、人工透析中の人は、他の要件 を満たしていれば2 級と認定されることがほとんどといってよいでしょう。
③認定要領
自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、人工透析療法の実施状況、日常生活状況等により、総合的に認定されます。検査項目には私たちが血液検査で目にする数値がいくつも出てきます。例えば慢性腎不全の場合の検査項目としては、血清クレアチニンが8.0 以上で「高度異常」に該当することになっています。透析前でもクレアチニンが8.0 以上なら障害厚生年金3 級の可能性がある、ということです。

障害年金、初めての申請

(1) 申請は患者本人でもできる

初診日の診断書が問題なく入手出来て、保険料納付要件を満たしていれば申請は自分でも行えます。障害年金の申請窓口は年金事務所ですが、初診日の時も現在も同じ年金制度(例えば公務員共済や私学共済など)の場合はその年金の窓口機関でも相談できます。

(2) 請求するときに必要な書類

①年金請求書
これは日本年金機構のホームページから入手できます。
②添付書類等
添付書類をそろえるのは少したいへんです。代表的なものを列挙すると…
・基礎年金番号通知書 ・診断書(所定の様式あり)・受診状況等証明書・病歴・就労状況等申立書・金融機関の通帳のコピーなど
そのほか、配偶者や子の加算を受ける場合にはその証明が必要です。また、本人の状況によって年金加入期間確認通知書等を要する場合があります。

老齢年金と障害年金の関係

前編で年金は「2階建て」になっているという話をしました。老齢年金であれば「老齢基礎」と「老齢厚生」を、障害であれば「障害基礎」と「障害厚生」を受給することができます。
ただし障害年金を受給している人が65歳以降になると例外的に「障害基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせであれば、組み合わせて受給することが可能です。障害厚生年金と老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)との組み合わせはできません。
障害基礎年金は満額で受給できるため、「障害基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせの場合の金額が多くなります。65歳になり障害年金と老齢年金の併給を希望する場合、「年金受給選択申出書」の提出が必要です。組み合わせ方に迷ったら、私どもに相談ご相談ください。

老齢年金の繰り上げ、繰り下げと障害年金の関係

老齢年金は60歳以上65 歳未満の間に繰り上げて受給したり、66歳以降に繰り下げて受給したりすることができます。「繰り上げ」は年金額が0.4%減少し、「繰り下げ」は0.7%増加する仕組みです。ここでは「繰り上げ」「繰り下げ」と障害年金の関係を見ていきましょう。

老齢年金の繰り上げと障害年金

老齢年金を繰り上げると「65歳に達しているものと同様」の扱いを受けることになります。腎臓疾患のため障害年金を請求するには「65歳の誕生日の前々日」までに請求しなければなりませんので、繰り上げしていると請求できないことになってしまいますから注意してください。なおすでに障害年金を受けている人は老齢年金を繰り上げることはできません。

老齢年金の繰り下げと障害年金

障害厚生年金や遺族厚生年金、遺族基礎年金を受け取る権利がある場合は、老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)の繰下げ受給の申し出はできません。また、現在受給している障害年金を繰り下げることもできません。ただし例外的に、障害基礎年金のみ受け取る権利のある人は、老齢厚生年金のみ、繰下げ受給の申し出ができます。

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代表/粟田 和博
(あわた かずひろ)
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